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ふいご踏み歌(たたら製鉄)

 兵庫県の千種鉄は良質な玉鋼として、備前の刀匠からも珍重されていたのは周知の事ですが、たたら製鉄の苦労を伝える伝承は、今ではほとんど残っていません。 例えば、番子の苦労も相当なものだったことが伝えられています。番子とは「ふいご」の踏み手の事です。たたらは、一旦始まると三日三晩ぶっ続けで作業が行われます。この番子、過酷な仕事ゆえ、千種町に残っている言い伝えでは、一日に酒一升・米一升が必要だったとも言われています。 また、千種町には下記の「ふいご踏み歌」が残っています。 ハァー♪、庭の梅のホホィホィ 鶯の鳥が鳴くぞみなされホーホケキョ たたら番子は乞食より劣り 乞食は寝もする楽もする 鉄が沸くわくよしこの山で 手前な黄金で五五段 竹の切株溜まりし水は すまず濁らず 出ず入らず おれも妻もちゃ あのごとく ※「たたら師鎮魂・寺林 峻」より引用   少し意味の分かりにくいところもありますが、乞食との対比など、番子の苦労がよくわかりますね。地元の言い伝えでは、壮絶な仕事ゆえ、嫁のきても少なったそうです。 この踏み歌を歌いながら、三日三晩ふいごを踏み続けておられたようです。ちなみに、今でも使う「代わり番子」の「番子」はここから来ています。  農村文化中心の日本としての伝承や言い伝え、風習などは一般的に知られています。しかし農業を始め、建築や伝統工芸などは製鉄技術の下支えがあったからこそ、発展してきた事に間違いありません。 歴史の裏舞台に隠されてしまっている「鉄の技術」を支えてこられた方について、私たちはもっと学び、感謝をするべきだなーと思わせる「ふいご踏み歌」でした!!